フィンランド、料理入門
まず、タイトルを吟味していただきたい。「フィンランド、料理入門」である。「フィンランド料理」入門ではない。フィンランド料理が必ずしもまずいわけではないが、あえて作るほどの魅力はないので、フィンランド在住者がそんなものに入門してもしょうがないのだ。そうではなく、食材はもちろん調理用具も環境も異なるフィンランドで自炊する工夫を実践に基づいて記していくのが趣旨である。
ここで紹介するのは「スーパー和食」。これ、10年くらい前から冗談で言ってたんだけど、昨今では「理想的な健康食としての日本食」という意味で使われているようですね。それには異論もあるが、話が長くなるので割愛。本項でいう「スーパー和食」というのは、フィンランドの全国どこにでもあるスーパーマーケットで入手できる身近な食材で作る和食、和風料理のこと。
ヘルシンキには純日本製品を扱う専門店もあるが、それらの食材を使えば簡単に日本食ができるのは当たり前だし、地方在住者には無縁なので同店の商品はとりあげない。また、帰国の際に買ってきた、来訪者の土産にもらったなど、在フィン日本人なら誰しもなにがしかの純国産材料を持っているだろうが、それらの使用も基本的には除外。誰もが入手できる食材を活用して、なんとか和食(風)を作ろうではないか、というのが「スーパー和食」なのである。他人にはあんまり言わないほうがいいね、笑われるだけだから。
現在はスシ関連の食材をけん引力に日本食材(風)の商品が全国で入手できるので、それらを利用すればそこそこの和食ができる。また、エスニック食材店で扱っている日本(風)食品は紹介メニューの随所でとりあげている。最近は地方都市にもその手の店が増えているので、比較的簡単に入手できるからだ。
とはいえ、仮にそんなものがまるでなくても、知恵と工夫でなんとかして和食(風)を作り上げるのが「スーパー和食」の趣旨である。時として野草を摘み、キノコを探すこともある。また、アレはコレで代用できますよ、といったヒントをまとめていく。
本欄での記載はフィンランドの事情に基づくので分かりづらい部分もあるだろうが、日本食材の入手が難しい国で応用できる。同時に、たとえば「ホンジュラスではこうしてます」なんて工夫やアイデアが寄せられることを切に望む。
メニュー
とにかく材料が極端に限られているし、同じ素材(たとえばネギ)にしても日本とフィンランドのそれは激しく異なる。そこでスーパー和食のメニューは、ご飯を炊いたら「和食」、醤油をたらせば「和風」という柔軟な考えを基本スタンスとしている。ふざけているように思うだろうが、コレ、日本食の本質を顧みる要素にもなるんだよね。
さらにハンバーグステーキ、カレー、ラーメンなど、本来は外国産であっても、日本での日常食、家庭の食卓にのぼるものはすべて「スーパー和食」の範疇である。日本の定食屋でカレーを食べるとき、「今日はインド料理だ」と思う人はいませんよね。元祖とは大きく姿を変えたカレーやラーメンを和食ととらえることに違和感はないだろう。逆にいうと、そうした輸入もの和食こそ、フィンランド(海外)では味わえないものだったりする。これらが「スーパー和食」のメニューになるのは当然のことだ。
また本ブログはある程度の料理経験がある人を対象としているので、各材料の配分や調理時間等の詳細は記さないことが多い。ヒントの提供が目的だからだ。さらには調理工程の写真なども少ない。理由は同様。完成品の写真すら載せないことがあるかもしれない。かといって「実際は作ってないんじゃない?」などと疑ってはいけない。そういう心構えだと食中毒を起こすぞ。
使用上の注意
①食材の工夫
乏しい食材の何がスーパー和食に使えるか、代用できるものは何かなどを考える。
例:鰹節がなければFish sauceでごまかそう。梅干はドライトマトで代用できることもある、など。
②調理の合理化
ちょっとした割り切り、開き直りで手間の削減を目指す。要するに、手抜きのコツに触れるわけだね。
例:ハンバーグはオーブンで焼けばええやんか。
③献立づくりのヒント
本欄のメニューには我ながら工夫がないと思うものもある。しかし、毎日の料理作りでは「何を作るか」が最大の課題だったりする。食材も限られてるんだし。そこで、あえて凡庸なものも取り上げてある。したがって、「何を今さら寝ぼけたことを」などと憤ってはいけない。高血圧が悪化するぞ。