2025年9月から、キップの種類や買い方が大きく変わった

世の中全般でモバイル・アプリが浸透しきっている中、フィンランドの交通機関のキップの種類や買い方も大きく変わりました。そこでここでは首都圏の公共交通機関をつかさどるHSL(ヘルシンキ地域交通局)のチケットについて説明します。
まず、2025年6月以降、自動販売機でキップを購入することができなくなりました。同年10月現在、所々に自販機は残っていますが、これはトラベルカード(Suicaのようなもの)への課金ができるだけです。それすらも全廃の方向にあります。したがって、冒頭の写真はかつての思い出です。

では実際にキップを買うにはどうすればよいか。これには3つの方法があります。なお、便宜上「キップ」と記しますが、形のある「キップ」はキオスク(Kioski)で買うものだけです。要は乗車「権」を得るには3通りがあるということです。

 

①キップ

キップといってもQRコードが印刷されたぺらぺらのレシート状のもの。
かつてはいろいろな種類がありましたが、現在では一回券もしくは一日券の二種類だけとなっています。

写真はそのうちの一日券。料金は10ユーロですが、手数料として90セントが加算されます。
手数料は一回券も同額で、たとえば市内中心部で使うABエリア券の定価は3.2ユーロですが、実売価格は一枚につき4.1ユーロに。1日に2~3回買うこともあるでしょうから、その場合は購入のたびに手数料が。まとめ買いをしても、枚数X90セントが上乗せされます。

また、このキップはトラム・バス等に乗車する際にカードリーダーにかざしてアクティベートする必要があります。その方法については後述します。

 

 

 

 

 

 

②タッチ決済

これが一番簡単な乗り方。バス・トラム・電車なら車内に、地下鉄ならプラットホームに降りる入り口にカードリーダーがありますので、その読み取り箇所にクレカをかざすだけ。ただしこの場合でも手数料がかかり、20セントが加算されます。
また、これで買えるのは一回券だけです。
タッチのやり方についても別項で説明します。

 

③モバイルアプリ

HSLのお勧めがこれ。金額的には最も安く(といっても定価で買えるというだけの話)、種類も豊富。キオスクでは一回券もしくは一日券しか買えませんが、アプリなら1~13日までの有効券が購入できます。2日以上のデイチケットを買うなら断然お得に。

HSLアプリの紹介サイト

https://apps.apple.com/jp/app/hsl/id1340229182

アプリのダウンロードはいつするか。これには二つの説があります。
・出発前に日本でアカウントを作り、クレカを登録しておく。
・フィンランドについてから手続きする。

いずれも不具合の報告がありますが、とりあえず日本で取り組んでおいたほうがよいでしょう。もしそれでうまくいかなかったら、フィンランドで再インストールすればよいだけの話ですから。

 

有効区間を確認する

キップを買うには、まず有効区間を理解する必要があります。首都圏はヘルシンキを始めとして8つの市で構成されていますが、HSLはこの地域をA・B・C・Dの4つに分け、それぞれに必要なキップの種類を定めています。まずは区分の概要をごらんください(クリックで拡大)。

 

図を見ればわかるように、ABのキップではCもしくはD区域には行けない、ということです。
近郊列車および地下鉄路線も示された詳細図は以下の通りです。

 

 

これは詳しすぎてむしろ混乱するかもしれません。ヘルシンキ(周辺)観光で現実的に必要なのはABもしくはABCをカバーするキップだけと断言できるので、最初の概要図でおよその感覚をつかんでおけば十分です。
そこで、ABおよびABCの有効地域と注意点を記しておきます。

ABの有効地域

ヘルシンキ市すべてとヴァンター、エスポーの一部をカヴァー。ヘルシンキ空港は区分外。

ABCの有効地域

ヘルシンキ、ヴァンター、エスポーすべてで有効。空港への往復にも使えます。

購入例

・空港から市内のホテルへ                           ABC
・ヘルシンキから隣町エスポーのアールト大学へ   AB
・ヘルシンキからヌークシオ国立公園へ              ABC

 

観光にはデイ・チケットが便利

キップを買う際には、さらに有効期間を選びます。
おおまかには2種類。80分(ABCは90分)有効の1回券(kertalippu=ケルタリップ)と、1日から13日まで、1日単位で選べるデイチケット(vuorokausilippu=ヴオロカウシリップ)とに分けられます(二日以上のチケットはHSLアプリでのみ購入可能)。ここでいう「1日」とは暦日ではなく、使い始めから24時間を単位とします。日をまたがっても有効です。おそらくその間に3回は利用するでしょうからデイチケットがお得。乗れば乗るほど割安に。仮に値段的にはトントンのケースでも、購入の手間を考えるとデイチケットを選んだほうがよいでしょう。


なお、1回券でも有効時間(たとえば80分)であれば乗り降りは自由。バスからトラム、トラムから地下鉄へ、と乗り換えることができます。
有効時間の「80分」というのは、その時間内に降りろというわけではなく、最後の乗車が有効時間内であればOKということです。したがって現実的には80分以上の乗車も可能です。

 

1枚のチケットでなんにでも乗れる

1回券、デイチケット、いずれも首都圏の公共交通機関すべてに有効です。すなわち、バス・トラム・地下鉄・近郊列車・スオメンリンナへのフェリーに乗れるわけです。

 

主なキップの値段

HSLアプリで購入するABおよびABCエリアの大人料金は以下の通りです(単位:ユーロ、2025年10月現在)。18歳未満は半額。
キオスクでキップを買ったり、クレカで支払う場合には、先述のようにチャージ料が発生します。

 

種類 AB ABC
一回券 3.2 4.4
一日券 10 12
二日 15 18
三日 20 24
四日 25 30
五日 30 36
六日 35 42
七日 40 48


*二日以上のデイチケットはアプリでのみ購入可能