Benssa Suonissa:血管にガソリン

スピードこそわが命、行く手に待つものは・・・

監督 Risto Jarva
制作 1970年 97分
出演
Pertti Melasniemi  …  Tapsa
Lilga Kovanko  …  Marja
Ulf Törnroth    …  Lasse
Perttu Näsänen   …  Mölli
Matti Ollila   …  Ville
Jorma Pulkkinen
…  Rally Commentator

「栄光のルマン」を彷彿させるようなドキュメントタッチのラリー映画。ルマンに比べればスケールは小さいが、制作はこちらのほうが若干早いのがちょっとした驚き。さすがにフライング・フィン(かっ飛びフィンランド人)と言われるだけのことはある。しかもレースこそわが人生、とする主人公が女性というのもフィンランドらしくていい。

はたしてこの映画をS・マックイーンが見たのか、見たとしても影響を与えたのかどうかは分からないが、モータースポーツファンの心をとらえる内容といえる。かくいう私はモータースポーツに関する知識はほとんどないけど、その熱気は伝わってくる。

フィンランドでのラリーの中心地であるユヴァスキュラを舞台に、伝説のラリードライバーHannu Mikkolaなんてのが出てくるのもマニアにはたまらないだろう。誰それ? が一般の反応だろうが、思わぬところで妙に詳しい人はいるからね。映画に現れるラリー史は60年代の事実に基づいているらしい。当時のニュース映像なども混じり、ドキュメントタッチのカットも多い。

MarjaとLasseはスピードに生きるカップル。そこにメカニックのTapsaがからんできて、物語の侵攻は不幸な結末を推測させる。図らずも的中。DVDのオマケプログラムの映画紹介にはブラックコメディとあるけど、そんなニュアンスではない。エンディングはもちろん、この映画で笑えるところはない。

なんとなく作風が気に入ったので、同監督の別作品も見てみたい。Mies, joka ei osanut sanoa ei/ノーと言えなかった男(75) とか、Jäniksen vuosi/ウサギの年(77・遺作)なんてのが面白そうだ。いずれも40年以上前の作品だから、入手が難しそうだけど。

ところでBensaa Suonissaというタイトルは「血管にガソリン」という意味。Bensa(a)はガソリン、Suoniが血管。「俺が走るのは血管にガソリンが流れてるからさ!」って、ひところの暴走族がいいそうな気持はよくわかりますよね。これを気の利いた邦題にできないものか。直訳して「血管にガソリン」じゃアブナイ薬物中毒者みたいだし。映画の内容を反映すると「生まれついての走り屋」とか「スピードこそ命」みたいな感じ?