友達にはなりたくないタイプ、なれないけど
製作 2006年 135分
出演
Jasper Pääkkönen (Matti)
Elina Hietala (Taina)
Juha Veijonen (Maisteri)
Peter Franzén (Nick Nevada)
Elina Knihtilä (Mirva)
いわずと知れたMatti Nykänenの半生を、コメディタッチで描くドキュメント。といっても、一般の日本人はもはや知らない人のほうが多いだろう。40歳未満なら、スキー関係者でなければ知らなくて当然だと思う。
昔ね、いたんですよ、鳥人と呼ばれるスキージャンプの英雄がフィンランドに。80年代に大活躍して、甘いマスクが日本人女性には大人気だったりしてたんです。映画のタイトルは本人の名前をそっけなく冠しただけ。Mattiなんてありふれてるんだけど、フィンランド人なら「あ、あのマッティね」と即座に理解できるから、製作者はあえて命名したのだろう。英語バージョンだとHell is for heroes(地獄は英雄のためにある)なんて、内容を暗示する副題がついてるけど、営業政策としてはそれも理解できる。
彼の輝かしい業績は十代から始まるが、1984年のサラエボオリンピックで金銀メダルを獲得して名声が一気に高まる。続く1988年のカルガリーオリンピックで3種目の金メダル獲得し、不動の地位を確立。スキージャンプ・ワールドカップでは史上最多の46勝をあげるなど、フィンランドの国民的英雄。記念切手も発行されちゃうほどの重要人物になった。
ま、ここまではいいんですが、彼は日常生活の奇行でも非常に有名です。ご他聞にもれず酒がらみなんだけど、バーで暴れるなんてのは日常茶飯事。衆人も「Mattiだからしかたない」と半ばあきらめ、半ば面白おかしく眺めていたそうな。しかし異常な行動は次第にエスカレート。チームメイトに暴行をはたらいたり、奥さんに暴行、殺人未遂の実刑判決が下り服役。その後も家庭内暴力を繰り返す、といった犯罪者になってしまいました。その他いろいろエピソードがあるんだけど、その一端をこの映画にみることができます。
18歳にして天才スキージャンパーの名声を得た少年がいかにして壊れていったか。酒癖の悪さは弁護できないとしても、映画に基づいて考えると彼もまた被害者だったこともわかる。マッティの獲得したメダル群がオリンピックスタジアムの博物館に展示されるに至った経由も描かれており、ちょっと悲しくなる。この映画について、フィンランド国内での評判は芳しくない。★評価は平均2.5といったところ。あまり見たくない内容ということだろうか。2時間15分という長さもマイナスかも。
ところでMatti Nykänenという名前を日本ではマッティ・ニッカネンと記しているが、なんとかならないものか。Nykänenの発音は難しいが、「ニッカ」はありえない。せめてヌカネンもしくはニュカネンとしてほしい。これ、Paul McCartneyをパウル・マクカートネイと書くようなもんだよ。