1980年、スオミロック誕生の年の青春像
監督 Perttu Leppä
製作 1999年 100分
出演
Unto Helo … Patu
Hanna-Mari Karhinen … Noora
Mikko Hakola … Lajunen
Jimi Pääkallo … Jimi
Timo Lavikainen … Kukkonen
Olli Sorjonen … Kakkonen
Aino Seppo … Patun äiti
アマチュアロックバンドがプロになるまでの過程を描いた青春ドラマ。自分の体験にも重なって、素直に気に入りました。
制作は1999年なんだけど、描写される映像が古くさい。これは意図的なもので、時代設定を1980年にしているため。1980年というのはハノイロックスがデビューした年で、スオミロック誕生の年と言われている。メインの挿入歌であるNuori poika(Eppu Normaali) やブルースブラザースのEverybody needs somebodyは同年の発表だ。やはり映画内で流れるハノイロックスのI want youは82年だけど、ご愛敬。
ロック少年の主人公Patuが夏のアルバイト先でLajunenと出会う。ラユネンがバンドをやっているということを聞き、練習を見にいく。パトゥは音楽界に顔がきくとでまかせをいい、彼らのマネージャーになる。オリジナル曲はフィンランド語でなければならない、バンド名は二語にするように、と提案。「ハノイ・ロックス」にあやかってのことだろうか、Kalle Päätaloを名乗るようになり、名門ライブハウスであるTavastiaでの演奏を目指して練習を繰り返す。タヴァスティアは現在もカンッピ・ショッピングモールの近くで営業している人気店。まあ、今ならクラブといいますか、当時の日本なら渋谷・屋根裏や新宿・ロフトのようなもの。ロック少年あこがれのステージ。余談ながら、ギタリストの使うアンプはMusic man。これもやはり当時のロック少年にはあこがれの製品でした。
マネージャーのパトゥはいろいろと仕事を取ってくるが、バンドの志向性とは異なるダンスパーティやら、ロックには無縁の人々の前で演奏したりする。後者は田舎の集会所でのことだが、ステージの幕が開くと、観客席がは中高年者で埋まっているのにメンバーは唖然。バンド名のKalle Päätaloは有名な小説家の名前でもあるので、その講演会と思って人々が集まってきた、というオチ。
そんなこんなで、ときに泥酔したり、薬物をつかったり、男女のいざこざがあったりと青春ドラマを交えて進行。やがて念願のタヴァスティアへの出演が決まるが、ヘルシンキに向かう道中、パトゥとバンドは仲たがいする。パトゥは車を降りるが、一人立ち寄った喫茶店でジュークボックスをかける少年を見てかつての自分を思い出す。映画のはじまりにパトゥがジュークボックスに寄り添うシーンがあるのだが、そこに重なるわけだ。
思い直したパトゥはヒッチハイクでヘルシンキへ。タヴァスティアにつくと、ちょうどKalle Päätaloが演奏を始めるところだった・・・とハッピーエンド。
タイトルを日本語に訳すと「長く暑い夏」。青春のひととき、若者の生活を軽快なテンポで見せてくれます。
カッレ・パータロというバンドはこの映画のためにかき集められたわけだが、本作によって人気を博しため、実際にも活動を開始。メンバーチェンジを繰り返して現在にいたるが、いまや知名度はほとんどないだろうな。
ところで、この映画を支持する年齢層ってどのくらいだろう。若者向け映画ではあるが、公開時(1999年)に二十歳前後の人々に、映画のテーマである80年の記憶などないはず。この映画を見て「あのころはパンクがさく裂してよう」と懐かしんだのは当時にして40歳前後?
また、Wikipediaでは本作もロック・コメディと紹介されているが、コメディ要素は極めて薄い。ユーモラスな部分もあるけど、むしろシリアスな側面が多い青春ドラマだ。