69 :sixtynine

タイトルにつられるとガッカリするかも

監督 Jörn Donner
製作 1969年 98分
出演
Ritva Vepsä(Tuula Virta)
Seija Tyni(Kristiina Koivu)
Sven-Bertil Taube(Jukka Virta)
Jörn Donner(Timo Passi)
Liisamaija Laaksonen(Liisa)

ムフフなタイトル、K-15なのでそれなりの描写はあるけど、もちろんポルノではない。タイトルもカバー写真も内容を暗喩しているが、むしろ製作年および当時の象徴の意味合いが強い。物語中にカフェで注文したコーヒーとケーキが69ペンニというのも同様。安すぎる感もあるが、主人公の夫の給料が1004マルッカだから、当時の貨幣価値を考えるとその値段もありえるのかな。90年なら1マルッカでコーヒー飲めたし。

さて映画の内容は夫の浮気を知り、半ば復讐で愛人を作る妻のお話。両人とも連れ合いに愛人がいることが察知しても、夫婦生活はなんとなく続いていく。女主人公(Ritva Vepsä)が打ち明ける悩み、「(夫を)愛していないし、嫌ってもいない。別れられないが、一緒にいることもできない」というのは長年の結婚生活に流された人々に共通する思いなのか。愛人とは別れず、かといって離婚もせずに問題解決は先送りにしたままであっけなく、明るくおしまい。そうすることが良策、もしくはそもそも解決なんかできんのよ、つうことか?

私がこの映画を見たのは2010年。制作は69年。懐かしい昔を回顧する気持ちがあったと思うが、よく考えてみると当時の最先端事情を取り扱っていたわけだ。フリーセックスが喧伝されていたころ。したがって、こうしたあいまいな結末はありきたりなことだったのだろう。現在でも大差ないのかもしれないが。

なお、この映画は71年に日本でも公開されており、邦題は「私は好きな女」。ポルノ映画丸出しタイトルに誘われて観に行った人は落胆しただろうな。配給会社はフィンランド映画にはまるで関心がなかったんだろうが、もう少し工夫できなかったのかね。観客動員のための苦肉の策か。
脇役も含め、わりかし美形女優が出演しているのがフィンランド映画にしては珍しい。また、セリフは少なめかつ簡単な表現ばかりなので、フィンランド語中級レベルでも全部分かるんじゃないかな。

なお、監督のJörn氏は2020年に死去。肺がんに犯されながらも2018年まで新作を発表していた。エロチック作品とともにドキュメントも多く撮影している。もっと注目されていい。

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