Paperitähti:グラビアアイドルの行く末

栄光から凋落した凄惨な日々、しかしよく分からない

監督 Mika Kaurismäki
製作 1989年 91分
出演
Tiina Björkman  (Model)
Pirkko Hämäläinen   (Anna Kelanen)
Soli Labbart    (The Rose of Sörkka)
Hannu Lauri  (Ulf Tallgren)

お待ちかね、カウリスマキ作品の紹介です。といってもアキじゃなくてお兄さんのミカ。二つ違いの兄弟で、彼らの風貌はよく似ている。しかし映画の作風は大違い。
本作は峠を過ぎた元スーパーモデルの荒廃した生活を描く。タイトルのパペリタフティを直訳すると「紙の星」。ハリウッド映画のPaper moon(1974年)を思い浮かべるかもしれないが、意味はまるで違う。こちらは紙上のスター、つまりグラビアのスターということ。見出しの「グラビアアイドル」は私の試訳。

かつてはチヤホヤされていたアイドルがアラサーとなり凋落し、生活は酒びたり男びたりとなる。酒、麻薬、売春、DVの描写がショッキングともいえるが、内容がよく分からない。これはアキ作品の分からなさとは別物で、本作にはストーリーがあるにもかかわらず狙いがあいまいな感じ。

まあ、「いかにも」な場末の女設定

シリアスなフィンランド映画には、登場人物がなにかしらの孤独感、疎外感を抱えているというのが共通点がある。本作も例外ではないので、そのメッセージを汲み取ろうとしたけどはっきりとはつかみきれなかった。とあるレビューでは星1.5の評価もあるから、日本人がわからなくていいのかも。ロケ地がほとんどヘルシンキ中心部なので、ああ、ここもあそこも知ってる、なんてことに楽しみをみつけてました。

最後は一種のハッピイ・エンディングといっていいのかな。ああいうフィンランド男も結構いそうな気はする。

なお、主演のピルッコ・ハマライネンはミカ・カウリスマキ作品には頻繁に出演。本作でフィンランド・オスカーの主演女優賞を受けている。当時30歳。ベテラン女優(30歳)の汚れ役への体当たり挑戦を評価、といったところなのかな。

余談ながら本作はフィンランドの特異な人気歌手、Juice Leskinen(2006年没)の歌うPaperitähtiが創作の源だという。同曲はKinksのCelluloid heroes(1972)をフィンランド語で歌ったもの。
キンクスの原曲では「人生が映画だったらいいな。苦痛は感じないし死ぬこともない」とい歌っている。Juice版は「人生が雑誌だったらいいのに。グラビアモデルは消えないし、痛みも感じない」と表現をアレンジ。この歌(特にキンクスの元歌)を咀嚼すると、映画が伝えようとしている痛みも伝わってくる。が、全体としてはやはりよく分からない。