4月の涙:Käsky

内戦を背景としたフィクションと割り切ればそれなりに面白い

監督 Aku Louhimies
製作 2008年 115分 K15
出演
Samuli Vauramo… Aaro(准士官・主人公)
Pihla Viitala…Miina(赤衛軍リーダー)
Eero Aho …Emil(判事)
Riina Maidre…Beata(判事の妻)
Miina Maasola… Martta(Miinaの戦友)
Eemeli Louhimies …Eino(Marttaの遺児)

熾烈な内戦が終結した1918年春。敗走する赤衛軍を白衛軍は捕獲し、捕虜となった女性兵士は慰み者にされることも多かった。

女性赤衛軍を率いるリーダー、ミーナ・マリン(Pihla Viitala)も被害者の一人。白衛軍兵士による強姦が連夜に渡る。ある日、他の女性兵士たちと行軍に連れ出されが、それは「逃亡」を口実に彼女たちを射殺するためのものだった。ミーナは森に駆け込み一命を保ったが、アーロ・ハルユラ歩兵(Samuli Vauramo)につかまり、司令部に連れ戻される。

捕虜を歩かせたのは手っ取り早く処刑するため

アーロは捕虜虐待に嫌悪感を抱いており、ミーナも正当な裁判を受ける権利があると頑強に主張。自軍兵士に疎まれる中、ミーナを軍事法廷に搬送すべく手漕ぎボートで出発。航海の途中でミーナの反抗に合いボートは転覆し、二人は孤島に漂着する。1週間ほど過ぎて「たまたま」近くを通った帆船に乗って脱出。エミル・ハッレンベリ判事(Eero Aho)の下にたどり着く。横顔がヒトラーに似た同判事は、一応は法に則った手順でミーナに死刑判決を下す。が、アーロに「俺と一晩過ごせばミーナを釈放する」と持ち掛ける。アーロは了承し、ミーナは自由の身に。ヘルシンキに向かい、冒頭で殺された戦友の息子を引き取る。

要約の終わりのほうはあえて大雑把にした。この間に挿入されている様々な話がこの映画のキモになるので、触れないほうがよいだろう。

漂着した孤島。この辺りから設定のおかしさが目立ってくる

悲惨な内戦下で敵味方の兵士に芽生えた愛、というテーマで感動を呼び起こそうという意図がミエミエ。白衛軍=悪、赤衛軍=被害者の図式もありきたり。いろいろな挿話にも無理が目立ち、説得力に欠ける。一歩兵が上官の命令に背いて敵兵に裁判を受けさせることなどできようか。男色家の判事が自分の欲望を満たすために捕虜を見逃すだろうか。ミーナを逃亡させる直前にアーロの上官たちが現れるのはタイミングがよすぎやしないか。
内戦を背景にした完全なフィクションと考えるべき。

軍事法廷への出頭。無罪となる策を伝えるが・・・

フィクションであれば、「戦時下に咲いた哀しい愛と正義」と解釈するのもよい。全編を通じたソフトポルノを楽しむもよいし、男色家へのサービスもある。また、さまざまな伏線とその回収に関心する人もいるだろう。

この笑顔でもう、すべてOKですよ

2時間近くの上映時間は無駄に長いが、物語の進行とはかけ離れた終わり方はいい。
戦友の遺児を迎えにいったミーナがいう。
「Einoって呼んでいい?」
エイノの返答は「お母さんって呼んでいい?」。
その後、二人で手漕ぎボートに乗り、満面に笑顔を称えるエイノがクローズアップされておしまい。この少年、監督の実の息子。

なお、エンドロールに合わせて、内戦当時の写真が流れる。かなりショッキングなものもあるので正視したい。