Rikos ja Rangaistus:罪と罰-カウリスマキの実質的デビュー作品

失敗を公開する狙い自体が失敗。その後の方向性は見て取れる

監督 Aki Kaurismäki
製作 1983年   93分
出演
Markku Toikka  (Antti Rahikainen)
Aino Seppo  (Eeva Laakso)
Esko Nikkari  (Inspector Pennanen)
Matti Pellonpää  (Nikander)

カウリスマキ初の長編。商業映画としてはデビュー作にあたる。アキちゃん自ら「世界一すばらしい本をズタズタにしてしまった」と反省していたそうで、自覚してはいたんだな。

ドストエフスキーに触発されての実験作は失敗に終わったようだが、26歳での実質的デビュー作ということを考慮すれば驚異的作品ともいえる。しかし、タイトルが古典文学そのままというのもヒネリがない。コメディ邦画の「罪とか罰とか」(2009年)なんかは気がきいてるよね。出典は自明だし、おバカな内容も推測できるので、鑑賞したくなる。

カウリスマキ作品常連の二人。Markku(左)とMatti。

後に確立するアキちゃんの基本構造は本作に表れているが、有名作品との違いも多い。まず、主人公のセリフが多いことが決定的に違う。また、照明が撮影のためというのがあからさま。意図的な演出なのだろうが、一般的には伝わらないと思う。失敗をわざと見せてウケようと思ったら単なる失敗に終わったという感じ。
さらには、さりげないユーモアが少ない、などを指摘できる。その後の作品は、ここから無駄をどんどん削っていったわけだ。

この作品でカウリスマキという原石が発見され、その後磨き上げて独特の世界を作り上げて輝きを得るわけだが、それは現在の評価を知っているから言えるだけ。公開時にこの作品に感銘を受け、あるいは可能性を認めた人はごく少数にかぎられるだろう。
もっとも、この時点にしてマッティ・ペロンパーの強烈な個性は萌芽している。な~んてことも今だからいえるんだよなあ。正直な感想としては、こんな映画に「罪と罰」なんてタイトルをつけんじゃないよ、というものです。