Leningrad Cowboys meet Moses

カウリスマキ作品は全部見たい、というファンだけにおすすめ

監督 Aki Kaurismäki
製作 1994年 92分
出演
Twist-Twist Erkinharju
Ben Granfelt
Sakke Järvenpää
Jore Marjaranta
Silu Seppälä
Mauri Sumén
Kari Väänänen (Mute)
Matti Pellonpää  (Moses)

前作で渡米したレニングラードカウボーイズはメキシコで人気バンドとなるも、メンバーの大半はテキーラの飲みすぎで死亡。ドサまわりで日銭を稼ぐ中、死んだはずのバンドマネージャー、Vladimir Kuzminが現れる。彼はモーゼとして生き返ったと宣言し、メンバーをヨーロパに連れ戻すことを約束。そこから始まるドタバタの珍道中・・・と書きたいところだが、ナンセンスな時間つぶしが続くだけ。どう考えても不可能な方法で大陸横断、フランスへ。コメディなんだから細かいこと言うな、という次元ではない。そこが面白いんだ、と思い込むしかないが面白くない。いくつかある微妙な間合いも、無理して好意的に鑑賞しなければ笑えない。

右下のおばさん、エキストラ? は大笑いしてるけど・・・

アメリカ、メキシコに加え、フランス、ドイツ、チェコなどのヨーロッパでのロケながら、セットはもちろん、街並みも60~70年代初期を彷彿させる。カウリスマキの意図的な画像づくりなので、ファンは安心するだろう。貧弱な食事、飲酒・喫煙シーンが多いのもお約束。

ストーリーに起伏はなく、素直に笑えるギャグもなく、無意味に欧州4か国を経て「ソビエト連邦」の国境を渡る。故郷に戻ってオシマイ。まるで面白くない。なにより、前作にも増して繰り返される演奏シーンが退屈きわまる。

ただ、Mute(口の不自由な人、一言でいえばオ〇)役のカリ・ヴァーナネンのとぼけた演技が印象に残る。また、マッティ・ペロンパーのカウリスマキ作品への出演はこれが最後なので、そういう面で興味を持つ人がいるかも。彼はこの翌年に無くなっている。実際の遺作は2015年のIron Horsemen。カウリスマキは製作に携わってはいる。

カウリスマキ作品に欠かせないマッティ・ペロンパーも精彩を欠く

レニングラード・カウボーイズ自体は前作(1989年)以降、じわじわと人気が高まり、本作前年の1993年にはヘルシンキ大聖堂前広場でロシアの赤軍合唱団(通称)とコンサートを開くなど、大人気バンドになっていた。「世界最低のロックバンド」から大出世だ。それだけに本作に期待を寄せる人もおおかっただろうが、見なきゃよかったというのが正直な感想。