雪の華:Snow Flower

けなす人は多いけど、それ以上に支持者が多いのも納得

監督 橋本光二郎
製作 2019年 125分
出演
登坂広臣:綿引悠輔
中条あやみ:平井美雪
高岡早紀:平井礼子
浜野謙太:岩永
山中聡:美雪の父
田辺誠一:美雪の主治医

徹頭徹尾、初めから最後までムチャクチャ、ハチャメチャ。支離滅裂な展開に終始することはいろんな人が書いているので繰り返さない。だれにも指摘されていない致命的な不都合にも気づいたが、それについても触れない。

人気歌手(登坂 広臣)とファッションモデル・女優(中条あやみ)演ずるラブロマンスに主眼を置き、感激に震えた人もいることだろう。でたらめな設定も、それでいいじゃん、という気にさせる面もある。「こんなことでいいの?」「こんなことがいいの」という劇中のセリフさながらに。

このあとのセリフが好きな人は多いだろうなあ

不治の病に侵された女主人公(美雪)は、余命を充実させるために100万円で雇った擬似ボーイフレンドとフィンランドに旅行。現地では観光局のプロモーションビデオさながらの映像でヘルシンキを楽しむ二人が描かれる。その後の紆余曲折は面倒くさいから割愛するが、病状の悪化した美雪は単身冬のフィンランドへ。子供の頃、父親に聞かされた「幸運を呼ぶ赤いオーロラ」を求めて。

きれいには収めてるけど、天候が今一つなのが残念

当然ながら、赤いオーロラが出てきます。奇跡が起きたかどうか。はっきりとした描写はないが、幸運を呼び寄せると思わせるニュアンスでエンディング。

ストーリーのいいかげんな設定について文句はいわない。しかし、一つだけ重要なことを言いたい。赤いオーロラが幸運を呼ぶなどという言い伝えなどない。それどころかオーロラは本来、不幸の前兆として忌み嫌われていた。

なんだ、結局ケチつけてるのかと思うかもしれないが、そうではない。すでに多くの人が指摘してきた本作の問題点は、常識で判断できるものばかりである。あるいは、しっかりと見ていれば気づく不自然さなどだ。

赤いオーロラが合成なのは明らか

しかし、赤いオーロラが云々などと言われると、素直に信じちゃう人もいるだろう。今後、このデマは独り歩きするかもしれないと思い、あえて記すことにした。

細かいことに目をつぶり、“美男美女” が “お伽の国・フィンランド” で愛情を育む映画としてとらえれば十分楽しめるでしょう。「こんなこと」もアリかな。

ただ、この映画に触発されてフィンランドに行こうという気になるひとは少ないんじゃないかな。フィンランド旅行の人気を高めた「かもめ食堂」(2006年)とはその点で大きく違う。

「かもめ食堂」はフィンランドに対する新しいイメージを提出し、今まで関心のなかった人たちの旅行熱をも高めた。いっぽう、「雪の華」は「かもめ・・・」以降にあふれ出てきた情報で定着したイメージの延長、もしくは「なにもフィンランドじゃなくてもいいじゃん」という構成だからである。これは映画の出来のよしあしには関係ない。

なお、本作の興行収入は11.2億円で、かもめ食堂(5.5億)の倍以上だ。つまり、けなす人以上に賞賛者がいるに他ならない。実を言うと私も結構好きなんですよ、コレ。実際のフィンランドを尺度にするといい加減極まりない展開なんだけど、「よく知らない外国でのファンタジー」、「どうせフィクションなんだから」と捉えると幸せになれる部分があるから。