ターニング・ポイント:Kääntöpiste

ありがちな設定だが、この手が初めてなら衝撃を受けるかも

原題 Kääntöpiste
監督 Simo Halinen
製作 2018年 104分 K-12
出演
Saamuel Vauramo … Jere
Laura Birn…Vera Virtanen
David Nzinga…Dominick
Andreas af Enehielmi…Aleksi DV男
Sara Paavolainen…Tea Aleksiの母
Wäinö Pylkkönen…Saku Jereの息子
Milena Argilander…Saima Veraの娘

阿部寛主演の「まだ結婚できない男」の最終話(2019.12.10放映)で、本作をもとにしたシーンがある。デートに誘う映画の題名が「ターニングポイントZ」。ドラマ上のチケットにはアクション映画風の写真が使われ、「ただのアクション映画じゃないんですよ」、「フィンランド映画ですよ」と阿部寛。それを聞くと、「ああ、こんな映画ないんだな」と思ったが、元ネタは存在していたのですね。

それが本作・Kääntöpisteで、本国公開は2018年。同じ年に日本のフィンランド映画祭でも上映されていた。邦題は「ターニングポイント」。フィンランド語タイトルを英語に直訳するとTurning point、それを片仮名で表記しただけ。説明するまでもなく、転換点、折り返し地点という意味だが、映画の内容とは無関係なところで興味を覚えた。

その一つは英語タイトルがEast of Sweedenであること。なぜ直訳のTurning pointじゃないのか。それは同年、同じタイトルのハリウッド映画が公開されていたので重複をさけたのだろう。
そこでEast of Sweedenと命名。スウェーデンの東といえばフィンランドだが、East of Edenをもじったものだろう。楽園と思われているフィンランドにもこんな闇が・・・という内容を暗示しており、気が利いてると思う。

いっぽうでEast of Finlandと紹介するサイトもあって興味深い。「フィンランドの東」じゃまるで意味をなさないけど、スウェーデン? フィンランド? 同じようなもんじゃん、という深層意識が表れていて笑える。

Jere(左)とVeera

本作の主な登場人物は3人。フィンランド人男のJere、ひょんなことから彼と行動を共にするアフリカ人Dominic(Francis)、そしてシングルマザーのVera。事件のきっかけとなる男、Veraの夫であるAleksiも物語の要ではあるが、冒頭ですぐ死ぬのであまり気にしなくてもいい。このほかAleksiの母親およびJereとVeraそれぞれの子供もストーリーを味付けするが、基本的にはJere、Dominic、Veraが進行役なので分かりやすい。が、できすぎの偶然や腑に落ちない点が随所に出てくる。

具体的に書くとネタバレ、興ざめになるので気になったことを一つだけ記す。結局、何がターニングポイントだったの? あの場所がそれ? 「これ以上進めない。やり直そう」と強く思い込み、観客も納得できるような「折り返し地点」がない。盛り上げも薄く、結末も想定範囲内で感情移入できなかった。

DominicもしくはFrancis。難民ではない。

フィンランド映画にはありがちな展開ながらディティールには極めて現実的な面が盛り込まれているので、この手の作品を見たことがない人は「フィンランドの意外な一面」に心を動かされるかもしれない。映画祭での評判が上々だったのはそのせいだろう。

私としては「まだ・・」のほうが数倍楽しめましたが。

なお、監督のシモ・ハリネンは2014年度のJussi賞(フィンランド版アカデミー賞)において最優秀脚本賞を受けている。1963年生まれ。
有名作品にCycomania(2001)、Kerron sinulle kaiken(2013)などがある。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加