キアスマはヘルシンキで最も退屈な観光ポイント

議事堂、アマンダ、フィンランディアホールもワーストに

そろそろきちんとキア「ス」マと呼んでほしい

フィンランドのマーケット調査会社・TNS Gulpのアンケートによると、ヘルシンキで最も退屈な観光ポイントとしてキアスマ(国立現代美術館)が選ばれたそうだ(Merto紙 14.12.5)。

ヘルシンキ中央駅にほど近い一等地に建てられたキアスマは、その斬新なデザインで注目を浴び、世界中の観光客を集めている。それなのに”最も退屈な場所”とはどういうわけか。ヘルシンキで退屈な場所なんて、ほかにいくらでもあるじゃないか・・・。 同調査では、キアスマに並んで国会議事堂、アマンダ像、フィンランディアホールなどが”退屈な場所”として選ばれたとしている。たしかにアマンダ像は観光客が感心して眺めるようなものではあるまい。国会議事堂やフィンランディアホールも、名前につられて外観を見に来ただけの人には退屈かもしれない。

しかしアマンダ像はともかく、二つの建築物は中に入って細部を鑑賞すれば、さまざまな発見がある。感動がある。
そうすると、これらを退屈と評するにはなんらかのバイアスがかかっていると考えることができる。続く設問の”退屈なスポーツ”には、ゴルフが挙げられていることからもわかる。
つまり、一定の知名度・人気があるからこそ選択の対象になったのであり、それに対して批判・反感を投げかけたのであろう。ある程度は一般に知られていなければ、票が投じられることはない。

アマンダ像といえばヘルシンキの顔でもあるのに

たとえばアラビア工場に近いjapaninkatu(日本通り)などは退屈きわまりない小道だが、まったくの対象外である。誰も知らないし、関心もないからだ。いっぽうキアスマを訪れる人は多いが、それゆえに「期待したほどではない」といったマイナス点が目立っただけだろう。退屈さでは間違いなく上をいくシベリウス公園が候補になっていないのは、そこが面白いとは誰も期待しないからではないか。マイナス点が積み重ねはプラスでもあるのだ。「嫌いな男優ナンバー1」が意外と好きな男優の上位にも入ることがあるように。

とはいえ、キアスマがつまらないという考えは理解できないこともない。というのは、同所が扱うのは現代芸術だからだ。現代芸術を味わうためには、鑑賞者に眼力が求められる。また、素養のある人でも、いや、あるからこそ展示テーマが自分の興味に会わなければ退屈に思っても不思議はない。これが国立美術館との違いだ。美術鑑賞力のない人でも、古典芸術は歴史の産物として了解可能である。あるいは、なにも分からなくとも「ああ200年も前の作品なのね」と納得することができる。したがって、国立博物館の類は退屈な観光地ととらえることは少ない。

ところで、この国立現代美術館をキア「ズ」マと記すのはなぜだろう。フィンランド語の表記はKiasma。sは濁らず、キア「ス」マである。聞き間違えることはありえない。英語に倣った? 英語の発音は「カイアーズマ」に近い。イタリア語だとキアズマだけど、日本語でそれを踏襲する意味はまるでない。