フィンランド人は国旗が大好き

国旗掲揚日は少なくとも年間20日

フィンランド人は(自国の)国旗が好きですね。まあ、国籍を問わず、自国の旗が好きであって当然なんだが、フィンランドではことさらその感が強い。なにしろ公的な国旗掲揚日は原則として年間20日で世界最多。年によってこれより多く、慣習としての旗日も増えている。

旗日の根拠には2種類あって、法律で定められている日(文化の日や独立記念日など)と、慣習として行なわれているもの(戦没者慰霊の日とか音楽の日など)とに分けられる。不定期な旗日のうち、国会の選挙日や大統領の就任日は法律に基づいた国旗掲揚日だ。

また、特段の事情により国旗掲揚が推奨される日というのがある。たとえば今年(2020年)は冬戦争終了80年を記念した3月13日。トーヴェ・ヤンソンの誕生日である8月9日などがそれ。年間24日の旗日を数える。昨年は国内および欧州の議会選挙日があったのでさらに多い27日だった。ちなみに月別では5月が最も多く5日ある。

映画「クリフハンガー(1993)」の一コマ。監督がフィンランド人のレニー・ハーリンですから。

年によって国旗掲揚日の日数が変わるというのは日本では考えられないが、え、こんな日も旗揚げるの? という場合もある。それは母の日と父の日。それはいいとしても、前者は法定、後者は慣習によるもの、とされているのがなぜだかわからない。また、旗日だからといって必ずしも休日ということでもない。

白地に青く 十字架染めて ああ美しい スオミの旗は~

フィンランドの国旗を見ると、こんな文部省唱歌を思い出すわけだが、単純で潔い美しさがあると思う。で、この青・白は何を象徴してるのかというと、湖と雪と説明されるのが一般的だ。詩人のSakari Topeliusも言及したという説明を読んだことがある気がするが、現在の国旗は1918年に制定。この詩人はその20年前に没している。
一方、国旗の配色は空と雲に基づくという人もいる。確かにフィンランド国旗は真夏の青空と白い雲は切り取ったように見える。天気のいい日は実感するだろう。その反面、青い湖と白い雪を同時に見ることはできないから国旗をイメージすることもない。まあ象徴としての色使いと理解はできるんだが、もう少し検証が必要だ。

映画「ボヘミアンラプソディ(2018)」のラストシーン。本文とは関係ないんだけど、なぜか観客にフィンランド国旗がたなびいていたので・・・・

さて、国旗を掲揚する時間にはルールがあって、原則的に朝8時から日没まで。国旗を暗闇にさらしてはいけない、ということだね。夏場は明るいので夜9時までOK。ただし夏至祭だけは例外で、前日の午後6時(前夜祭の始まり)に掲揚し、夏至祭当日の夜9時に撤収する。この時期は一晩中明るいからね。また、独立記念日も特別で、この日(12月6日)は3時には暗くなるけど、午後8時までの掲揚が認められている。

なお、フィンランドの国旗は4種類あり、それぞれの違いは以下のとおり。

①市民旗。一般的に国旗といえばこれ。
②政府用旗。政府が公用で使用する。
③軍旗。
④大統領旗。

このほかロシア時代から独立直前までに3種類がある。国旗を考証するだけでもこの国の歴史や民族性が垣間見えてきて興味深い。1944年までの国籍標識にも触れたいところだが、話がややこしくなるので別の機会に譲ろう。