キノコの寿命はどのくらいあるのだろうか?

個体の旬は極めて短い

本来なら「胞子が菌糸となり栄養生長を繰り返して子実体を形成し・・・」と、文字通りにキノコの一生について言及したいところだが、そんな知識もないし、仮に説明できたとしても実感できる人は少なかろう。というわけで子実体、肉眼で観察できる姿、誰でも「キノコ」と認識できる状態がどのくらい続くのかを見ていこう。

テングタケの移り替わり

サンプルとしたのはベニテングタケ。よく知られたキノコであり、毒キノコゆえに誰も採らなだろうから、同一個体を長期間を観察できると考えたため。これがヤマドリタケだったらすぐに採られちゃって日ごとの変化を撮影するのはできないはず。何より自分で食べちゃうだろうし。

推定二日目
おそらく前日に「キノコ」として形成されたものと推定。土から顔を出したのはひょっとすると同日朝かもしれない。したがって以後の「〇日目」というのは、実際より一日多い可能性もある。

三日目
実際には二日目の状態かもしれないが、上記写真とは一日の違いであることに変わりはない。たった一日で赤ん坊が成人した感じ。

四日目
前日と大きな変化はないが、心なしか中年の入り口に差し掛かったような疲労感を醸し出している。傘の直径20センチ弱。これが食用キノコだとしても、おいしく食べられるのはこの辺が限界か。つまり、旬といえるのは子実体を確認してからせいぜい2~3日。

九日目
ここまで来ると老人である。六~七日目あたりの撮影ができなかったのが悔やまれる。

  

十五日目
十日目以降、大きな変化はなかったが、この前日にまとまった雨が降ったせいか、一気に朽ちた。おおむね二週間の寿命だったと考えてよいだろう。

まとめ

今回、改めて定点観測してわかったことは以下の通り。
・予想以上に初期生長が早い。生まれて1~2日で立派な成人になる。
・思いのほか寿命は長い。せいぜい一週間で朽ち果てると思っていた。

もちろん、特定の個体観測だけでキノコの寿命を一般化できるわけではないし、同種であっても季節(テングタケなら7~9月にわたって生える)や天候(雨が多ければ寿命も縮む)で様相は大きく変わる。が、キノコの生長が恐ろしく早いという点はほとんどの種(後述)に共通している。

したがって食用キノコであれば生え始めてから三日目くらいが旬。五~六日までなら許容範囲。それ以降は価値なしといえる。

一日で溶けるキノコもある?

テングタケが完全に朽ちるまでには二週間ほどかかることがわかった。思いのほか「長寿命」だった。が、それでも短い、旬は三日なんてチョー短いと思う人もいるだろう。しかし、さらに短命のキノコもある。ヒトヨタケである。

ヒトヨタケ。漢字で書くと一夜茸。一晩で朽ちてしまう寿命の短さから名づけられたとされている。
ある朝、ヒトヨタケの群生を見つけた。

で、夕方同じ場所を見たらすでに溶けていた・・・。

というのは嘘で、上の写真はヒトヨタケ発見から二日目のものである。しかし、寿命が極端に短いことは間違いない。また、これも天候等の影響が大きいから、文字通りに一晩(もしくは一日)で溶けてしまうこともあるのだろう。

ヒトヨタケの仲間をフィンランド語ではmustesieniという。インク(墨)のキノコという意味。本種はHarmaamustesieni(=灰色インクのキノコ)。上の写真でもわかるが、真ん中のそれだと確かにインクだ。傘が墨のようにドロドロに溶けて一生を終える。なお、ヒトヨタケは食用だが、使えるのは傘が溶ける前。つまり、生え始めから数時間しか採取のチャンスはないといえる。

種全体の寿命が同期間のキノコ

キノコは種によって顔を出す季節・期間が異なる。雪融け後にいち早く姿を現すシャグマアミガサタケは4~6月。前述のテングタケなら7~9月。おおむねその期間内にいくつもの個体が生まれては消えていく。早咲(?)、遅咲を交じえて、2~3か月の間は同一種が生息している。

が、全国どこでも同時期に生まれて同じころに朽ちていくという珍しい種もある。それがPohjanmesisieni(和名なし。キシメジ科ナラタケ属)である。

このキノコが姿を見せるのは8~9月だが、その間に世代交代していつでも同種が生えているというわけではない。生え始めはその年の天候・雨量により異なるが、たとえば某所で8月20日にこのキノコを見つけたとしたら、それから一~二週間がこのキノコを見れる期間。ヘルシンキとラップランドとでの地方差もなく、フィンランド全土で同じ状況。

写真下のように、幼菌(右側)と成菌(左側)が混在することは珍しくないが、いずれにせよ二週間もすればほぼ消えてなくなる。なお、幼菌は非常においしい。

数十年生きるキノコもある

キノコの(形が分かる)寿命は一日から二週間程度。非常に短いことがわかったが、数十年も生きるものもある。サルノコシカケの一群である。なお、サルノコシカケというのは総称、俗称、科名であり、そういう名前のキノコがあるわけではない。とりあえず木株に生えているアレといえば思い当たるだろうが、見た目が似ていても実はマンネンタケ科であったり、とよく分からないのだ。

それはともかく、たとえば写真のツガサルノコシカケの寿命も数十年と言われている。数十年。実際の寿命もよくわからないということですね。

すると、キノコの寿命は短いもので一日(ヒトヨタケ)、長ければ数十年(サルノコシカケ科等)か。じゃ、平均寿命は真ん中とって十数年? なわけはありませんね。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする