エスポー駅からバス6分でハイキングコースに
通称「アヒル池」。近くに「アヒル公園」もあるが、実際にいるのは鴨。
ヘルシンキから25分も電車に乗るとフィンランド第二の都市エスポー(Espoo)に着く。同駅周辺は新築ラッシュが続く住宅街だが、ここからバスに6分も揺られれば広大な森林地帯に入り込む。
地元住民には極めて身近。観光客にはまるで知られていない。そんな超穴場がエスポー中央公園(ケスクスプイスト=Keskuspuisto)だ。「公園」と言っても、ヌークシオが「国立公園」と呼ばれているのと同様、実態は森に囲まれた自然保護地域。総面積880ヘクタール。東京ディズニーランドの20倍近い広さがある。
手軽かつ多彩なハイキングルートが魅力
いわゆる「森と湖」のイメージからは少しはずれるかもしれないが、森林・池・草原・岩場と、自然のヴァリエーションは豊富。ハイキングルートも2.5キロ弱の基本周回コースから7キロまで、500メートル単位でアレンジすることができる。ルートづくりの参考になる地図はネットで入手できるが、バス路線は変更されているのでヘルシンキ交通局のサイトで確認しよう(エスポーからのバスは136番)。
公園内を縦横につなぐ基幹ルートは地元民のジョギングコース用に整備されているばかりか、夕暮れになると街灯もともされるので歩行は快適・安全だ。雪が積もればクロスカントリーのトレイルが整えられる。
基幹ルートをたどるだけでも爽やかな森林浴を味わえるが、方々に自然遊歩道という名の脇道があり、メインコースを少し外れて「密林」に入り込むことができる。ただし、地図とコンパスを使いこなせない場合は、いつでも戻れる場所にまでしか行かないほうがよい。獣道を踏み分けて展望台へ、あるいは見晴らしの良い大草原を延々と歩く、といった選択肢もある。また、同地は野鳥観測に恵まれた地域として、バードウォッチャーに人気が高い。住宅地から500メートルと離れていない場所でフクロウが観測できる場所など、ここ以外にはあまりないのではないか。
冒頭の「アヒル池」を北端から見下ろす高台。バードウォッチングのポイントとしても有名
これこそフィンランドの典型的な住環境
一般観光客にとってエスポー中央公園の最大の魅力はアプローチが手軽ということにつきるだろう。ヘルシンキ中央駅からエスポーまで電車で25分。同駅からバスで6分。ハイキングコースはバス停の前から始まる。2.5キロコースならゆっくり回ったとしても総所要時間(ヘルシンキからの往復)は3時間もあれば十分だ。ヌークシオだと、最短コースでも最低5時間。バスの待ち時間等を考慮すると6時間でもやや忙しいスケジュールだから、エスポー中央公園は文字通りに手軽に大自然に浸れる穴場といえる。唯一の欠点は行程内にトイレがないこと。緊急事態の場合、木陰で済ませることになる。
Hiidenkirnu=悪魔の臼。氷河期に形成された不思議な自然現象を見ることもできる。
「エスポー中央公園」なんて名前はおそらく聞いたことがないだろうが、もし訪れることがあれば、こんな身近に、こんな自然があることに感激することだろう。たとえば上の写真。日本語では「甌穴(おうけつ)」といい、岩盤の隙間に入り込んだ小石が雨水、雪どけ水に踊って正円を削りだしたもの。氷河期に生まれた自然現象を見ることができる。
また、比較的開けた森林なので(空が広い)、ドラマチックな夕焼けに出会えるチャンスはヌークシオよりも高い、キノコの種類や量が多いといった特徴もある。バードウォッチャーに人気が高いことは先述したが、これも自然保護地域に指定されているからこそ。しかしここ、住宅街に隣接しているのですね。ハイキング開始地点の代表的な場所は2カ所は、いずれも住宅地から始まります。これぞフィンランドの典型的な住環境・生活空間ですね。遠くに出かけなくても楽しめるんだ、ということを再認識。
なお、ヘルシンキ中央駅から(へ)の直通バスもあるが、迂回コースをたどるため所要時間は片道1時間20分くらい。無駄な時間も観光と割り切るなら、帰り道はちょっと裏道の風景を楽しむのもよいかもしれない。
自然保護地域への入り口に立ち並ぶ新築住宅。2016年まではここも森だった。バス停まで50メートル。