新旧の魅力を組み合わせたタリンを

緻密に計画を立てれば日帰りでOK

定番コースに一工夫すれば旧市街の魅力も倍増

タリン観光の目玉が城壁に囲まれた旧市街散策であるのはまちがいない。高台から望む中世の街並みは圧巻。ここを訪れなければタリン観光の魅力は半減。その後はいくつかの教会や博物館に入るもよし。タイムスリップの楽しさを満喫できるだろう。
しかし、城壁外にも足を延ばすとタリンの楽しさが倍増する。ぜひ訪れていただきたいのはいわゆる「新市街」と呼ばれるエリアだ。新市街の変貌は著しく、特にこの数年は変化のスピードが増し、ひと月単位でその姿を変えているといっても過言ではなかろう。新旧をとりあわせて過ごすことで、旧市街の魅力もさらに深まることまちがいなし。ただ、そのためにはしっかりとした計画が不可欠。予備知識がなくても旧市街観光に困ることは無いが、プラスアルファを味わうには時間が足りない、もしくは無駄にあまってしまう可能性はある。

とはいえ、500年を超す歴史を持つ旧市街に比較すればそれ以外はすべて「新市街」であり、100年前に生まれた住宅街もその名で呼ばれることがある。20年くらい前までは「新市街」というと、Viru門を出た先のヴィル・ホテル周辺を指していた。同ホテルは1980年のモスクワオリンピック時に竣工し、その後はここを中心に高層ビルの建設が続いた。ちょっと足を延ばすとショッピングモールもいくつかある。

地図はクリックで拡大(以下同)。

まずはタリン観光の基本から

ここでは旧市街散策をメインテーマとしながらも、その行程を少し伸ばすだけでよい二つの地域を紹介する。
が、その前にタリン半日観光の一般的なコースを概観しよう。
上掲地図の①がタリンク・シリヤのフェリー発着場。ここからまずは旧市街入り口の一つである太っちょマルガリータ(③)を目指すのが定番。
その過程で②のSadamarketという市場に寄るのもよい。食品店に加えて多数の土産物屋もある。タリンはこの10年ほどで健全化が大きく進んだが、それ以前の怪しげな雰囲気を残している場所。危険は全くないし、太っちょへの通り道だし、かつてのタリンの雰囲気を味わってみよう。
太っちょマルガリータを超えれば一気に中世の都市が展開。
青枠で囲ったポイントはタリン必見の場所だが、あとは関心に応じて歩き回ればよい。とりあえず④は除外して、旧市街内散策に限っても、食事に、カフェに、土産物巡りに、とゆっくり廻れば5~6時間はあっという間。ヴィル門(⑤)からフェリー乗り場に向かう。
これが一般的なタリン観光の行程。

で、本稿のポイントは旧市街+α。これには二つの選択肢がある。
旧市街北側の駅前市場を中心とした地域と、お洒落に特化したショッピング街との二つである。

オプション1.駅前市場

太っちょの後は聖オレフ教会の見学にとどめ、④に向かう。
Balti jaam turg(バルト駅市場)と呼ばれる室内マーケット。地域住民向けの活気にあふれる生鮮食品をはじめ、カフェ、エスニックレストランが豊富。広大な二階はヴィンテージショップが埋め尽くし、好きな人ならそこを見るだけでも1時間はかかるだろう。
市場から西にまっすぐ5分も歩くとTelliskiviへ。若手アーティストが様々な作品を展開。ここも満喫するには1時間では足りないので、その後の旧市街散策に影響するが、緻密に計画を立てれば不可能ではない。ただ、市場か芸術村か、どちらかに絞ったほうが無難。
この後は二つの展望台とネフスキー寺院を見てヴィル門へ。フェリー乗り場に急ぐ。

オプション2.Rotermann

太っちょの後は旧市街を堪能。人気レストランでゆっくりランチを味わうもよし、博物館等に入場するもよし。4時間は費やせるので、たいていのことはできる。そしてヴィル門を出たら⑥のロッテルマン地区(Roterman)へ。工場跡を改装し、新築部分と見事な調和を見せながら、多くのデザインショップで賑わう。エストニアを代表するチョコレートメーカーのKalev本店もここに。ところどころに出現する現代彫刻も楽しい。
時間に余裕があれば⑦のショッピングモール(Nautica keskusu)も覗いてみよう。特段目をひく店はないものの、Rimiという巨大スーパーマーケットが入店しているので、エストニアの日常的なお菓子などを買い求めるのもよい。
ここからフェリー乗り場には、ゆっくり歩いて10分。

次に、具体的な時間割である。

ヘルシンキとタリンを結ぶフェリーは3社が運航しているが、日帰りに適しているのはタリンク・シリア。そのうち、ヘルシンキ7:30発、タリン16:30発、もしくは10:30~19:30の便が一般的。いずれもタリンでの滞在時間は7時間。乗下船の時間を差し引くと、観光にあてられるのは6時間弱となる。これを基本として、タリンの新旧探索コースを模索してみよう。ヘルシンキ7:30発、タリン19:30発なら8時間は観光できるので余裕だが、需要は低いだろうから省略。8時間もあれば行き当たりばったりでも問題ないし。
とりあえずヘルシンキ7:30発での進行例を示す。10:30発の場合、以下の時刻に3時間足して考えればよい。

1 オプションが駅前市場の場合

7:30 フェリー ヘルシンキ発
9:30 タリン着
9:45 上陸 (下船には結構な時間がかかる)
10:20 港市場(Sadamarket)を経て太っちょマルガリータ(旧市街入り口)へ。
11:00 Balti jaam turg(駅前市場)
ここで早めのランチを摂り、旧市街に戻る。市場の代わりにTelliskiviに行くも可。
13:00 パットクリ展望台へは階段で上る。一種の裏技。
旧市街散策継続 マリア教会、ネフスキー寺院、デンマーク王の庭、市庁舎広場へ。
途中、カフェで休憩
15:00 旧市街をヴィル門から出て。実質的な観光は終了。
Rotermannを通って港に向かう。同所は名実ともに新市街の象徴だが、ここまで記してきた進行だと、ゆっくり味わう余裕はない。一~ニ軒を軽く覗ける程度か。
15:50 港着。ほぼギリギリ

2 オプションがRotermannの場合

7:30~10:20 前記と同様
14:00 ヴィル門到着。それまでの4時間弱は旧市街散策に集中。
前記観光ポイントに加え、各種土産店を覗く時間もたっぷり。博物館等への入場も。
ヴィル門からRottermannへ。デザインショップやお洒落な小路散策。カフェで休憩も。⑦のショッピングモール(Nautica)に寄る余裕もあるはず。
15:50 港着。

かなり複雑な展開になったので、おおざっぱに整理しましょう。

基本コース

①フェリー乗り場
②Sadamarket(行かなくても、それほど損はしない)
③太っちょマルガリータ
オプションA
④駅前市場or/and Telliskivi
オプションB
⑥ロッテルマン
いずれの場合もこの間に旧市街を歩き、⑤ヴィル門を出てフェリー乗り場へ

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