*コロナ騒動が始まった2020年3月~のブログを再録(23年9月)。コロナ回顧録その2。
この期に及んで海外旅行?
2020.4.6
片道40時間のツアーがある!
後先を考えない海外旅行でコロナに罹患した責任の一端は旅行会社にあるわけだが、現状はどうか。日本発フィンランドツアーを検索してみた。
さすがに4月中のツアーは見当たらなかったが、5月以降だといくつかみつかった。そのうちの一つが「ヘルシンキ5日間」というもの。
フィンエアーもしくはJAL直行便なら5日間の行程はポピュラー。いわゆる3泊5日という日程で、ヘルシンキのホテルに3泊。丸々二日は自由に使えるし、 初日は市内に5時ごろ着くから、夏場ならその後も観光を楽しめる。帰国日も一時くらいまでは余裕で歩き回れる。郊外都市も訪れるならちょっとせわしないかな、といった日程だ。
しかしこのツアーはそんなものではない。
初日は空港集合。出発は翌日未明。経由便利用のため、ヘルシンキに着くのは2日目の深夜。3日目はフリーだが、帰国便の出発は4日目の早朝。そして5日目深夜に成田着というスケジュールだ。片道40時間をかけて、ヘルシンキ観光は一日だけ。
果たして、こうまでしてヘルシンキに来る人がいるのだろうか。仮に需要があるとしても、旅行会社はこれまでの惨事をなんとも思っていないのか。
まあ、様子を見て出発時(たとえば5月1日)に状況が好転していなければ催行中止、予約金は全額返還ということになるのだろう。3月にフライト予約を受け付けていたカタールやSASの4月便はすべてキャンセルされた。上掲の5月便もおそらく取りやめだろう。
とりあえずは商品(ツアー)を販売しなければならないという事情は分かる。しかし、飛行機が飛ぶ保障はないし、出発後に状況が悪化することも十分あ りえる。ヘルシンキに着いたはいいが帰れなくなりました、となる可能性もあろう。なにより、仮にコロナ禍が沈静化したかにみえても、罹患する危険性はぬぐ えない。それを承知で販売するのだから、時節柄を考慮せずに旅行する人々だけを非難することはできまい。
じわじわ迫るコロナの影響
2020.4.10
ちょっと古いが、過去2か月ほどの感染状況(THL・国立保健福祉研究所発表)。これによると新規感染者は3月10日から増加傾向を示し(20人/日)、月末には80人に達している。グラフにはないが、4月上旬には一気に200 人まで急増。その後、50人/日程度に下がったため、THLは「感染のスピードを抑え込みつつある」と公表したものの、感染者の総数は依然として増加して いる。
その証拠に「拡散のピークは4月中旬」(同時期に学校再開の予定だった)としていた予測を「5月中旬」に訂正、さらに「6月にずれこ む」と言い換えた。抜本的対策が取れない以上、先行きが読めないのは無理もないが、果たして6月に収束方向に進むものか。きわめて不安である。
しかし日常生活は一応機能しているので、パニックに陥るほどではない。食料品店の商品は若干少ないながらも、不自由を感じるほどではない。もともと欲しいものも少ないし。
店舗も感染を 防ぐための施策を遂行。客の間隔をあけたり、レジにはアクリル板のカバーを設置。原則として現金は受け取らず、人と人との接触を避けるように努力をしてい る。
が、不愉快なことも経験。ある日、スーパーですれ違いそうになったフィンランド人が慌てて逆戻り。アジア人である私を見て「コロナが来た」という恐慌に陥ったのがあからさまだった。知人のタイ人は「中国に帰れ」とののしられたという。すべての中国人がウィルス保持者ではないし、そもそもワシも知人も中国人じゃないよ。
これからはそんな差別が増えていきそうな懸念も否定できない。
コロナのフィンランド上陸から2か月弱。この時期から以前の生活との違いがはっきりしてきた。
営業自粛は粛々と進む
020-04-12
日本でもしばらく前から「不要不急の外出は控えましょう」と呼びかけられていたようだが、SNSなどを見ると「不要不急じゃないけど散歩に出かけた」などと訳の分からない記述が散見し、ダメだこりゃ、と思ったものだ。クラスターやらなんやらとともに、言葉が通じていないのだろう。「緊急かつ重要な 場合以外は外出するな」と呼びかければよかったのではないだろうか。それでも巣鴨とげぬき地蔵通りは4月4日の縁日が大盛況だったそうだから、何を言っても無駄ということか。
いっぽう、フィンランドでは着々と自粛が進んでいる。はっきりとした時期は覚えていないが、大手チェーンに続いて個人経営のレストランも休業。持ち帰り商品の販売のみとなった。
それに先立ち、スロットマシンの使用が禁じられた。不特定多数がゲーム機器に触れるわけだから感染の危険性が高い。現金(コイン)がそのまま出てくる点も危ない。
フィンランド政府がコロナの蔓延を危惧し始めたのが3月10日。ゲーム機は14日より全面的に使用禁止になった。素早い対応だ。
パチンコ同様に中毒性があり、多くのフィンランド人が止められないほどに人気があるもの。余談ながらその収益は社会福祉に当てるのが建前なので、パチンコとは異なって社会的な有益性があるにも関わらずである。利益より健康を優先したわけだ。
続いて一般店舗の客足は激減。衣料品の購入は不要不急であるケースが多いから、それはうなづける。眼鏡店は接触の可能性が高いからか? それにしては美容院、理髪店にはそこそこの客が入っている。
近郊列車の乗客は一車両に多くて2~3人。線路わきで観察しただけだから正確には分からないが、ガラガラであることは遠目でもわかる。バスは路線によっては乗客ゼロ。
これらを見る限り「無人の町」のように感じるかもしれないが、あえてイメージを伝えるために写真を選んでいる。いずれもヘルシンキの隣町、エスポー(Espoo)での撮影だが、実際の人出はヘルシンキより多いのではないか? 屋外では特にそう感じる。
とはいえ、ヘルシンキは2か月ほど訪れておらず、WebCameraで見ているだけなので、実態は分からない。
4月10日時点での国内感染者は2769人。うち48人が死亡した。
非常事態が日常に。淡々と過ごす日々
2020.4.16
武漢ウィルスの殺傷力が周知のこととなって一月あまり。漠然とした不安は募る一方ながら、秩序は保たれているフィンランド。「ウィルスをばらまきに来た!」などと店舗に乱入するような吉外はいない。
以前にも書いたけど、厳しい状況を国民一丸となって乗り切ろう、という基本認識が形成されている印象。1939年~44年にかけての冬戦争、継続戦争に通じる国民意識を感じる。ちょっと大げさかな。そしてこれが民族差別を助長する恐れは現実的。指摘のないのが不思議である。
最近は「非日常」が「日常」になっている。さまざまな場所で注意喚起。上掲写真は国立保健福祉研究所による「咳・くしゃみをするときのマナー」と「手洗いの方法」を示したもの。ショッピングモールのところどころにアルコール消毒液が置かれ、「他人との距離をとりましょう」といった注意喚起アナウン スが控えめに流れる。
図書館、室内遊技場、カフェ等々はとっくに閉鎖されたため、戸外を出歩く人が多い。晴れの日が増え、気温も徐々にあがってきたから散歩が気持ちよい。幸い、フィンランドのどこに住んでいても、少し足を伸ばせば森林浴を楽しめる場所がいくらでもある。
旅行に行けないし、繁華街に出る気もない。そうしたことから散歩コースへの人出は従来の倍増といった感じ。ヌークシオ銀座の異名を持つ某焚火場は過密状態。森林省が別ルートの利用を誘うほどだ。
首都圏封鎖は当初の予定を前倒しにして昨日終了。感染者3237人、うち死者72人と微増してるのに大丈夫か? との懸念はぬぐえない。
いまどきスウェーデンに行くのか?
2020.4.20
いまさら言うまでもなく、現時点でもコロナ禍は拡大の一途。新しい感染者の増加数は減少気味だが、総数は増え続けている。上掲写真は本日午後一時のヘルシンキ。エスプラナーデ公園を臨む都心のど真ん中が寂莫たるもの。この様子はウェブカメラでリアルタイムに見ることができる。下記URLをたどると 国内5か所の様子が見れるが、どこも閑散としたもの。外出自粛が守られているようだ。
https://balticlivecam.com/cameras/finland/helsinki/helsinki-view-klaus-k-hotel/
ヘルシンキにある5つの港を映すサイトもあるので、ちょっと見てみたらびっくり。フェリーが運航しているのですね。ダイヤモンドプリン セス以降、フェリーはアブナイということで軒並み運航は中止になったと思っていたが、そうではなかった。ヘルシンキ⇔ストックホルム便は通常どおり。ライ ブカメラにはタリンクシリヤとヴィーキングラインの客船が南港に停泊している姿が映っている。
ストックホルム=スウェーデンといえば・・・・。これまで独自路線、すなわち何もしない政策を進め、なおかつ感染者を抑えていると報道されてきたが、一昨日のデータではいきなり世界ワースト10入り。感染者数13216人、死者1400人を数えた。単純に人口比で考えると、日本なら約2万人の死亡者に相当 するわけだ。そんなところにデイリーで運航するとは。スウェーデンの現状については再度調べてみようと思う。
https://www.portofhelsinki.fi/en/port-helsinki/web-cameras/south-harbour
ではヘルシンキ⇔タリンのフェリーはどうか、とタリンク・シリヤの予約ページをのぞいてみた。こちらも動いている。そのタイムテーブルを掲載しよう。
確かに運航しているのだが、片道切符だ。往復チケットを予約しようとしても帰路は選べない。つまり、帰ってこれないのである。フィンランドには多くのエストニア人が生活しているから、母国を訪れたい人々の需要は高いのかもしれないが、フィンランドにいつ戻れるかも分からなくても帰省するのだろうか。
なお、タリンクシリヤも営業不振を挽回すべく、免税品のネット販売を推進。その案内メールがよく届くようになった。旅行もしないで買い物が免税対象になるのか? よく見てないが、チョコやぬいぐるみなんか買ってもしょうがないだろう。酒・たばこ・高級化粧品は当然ながら販売されない。
本日の感染者数3783人、死者94人
フィンランド入国は事実上不可能に
2020.4.24
20日の投稿で「ヘルシンキ⇔ストックホルムのフェリーがまだ運航してる」と書いたのは、ウェブカメラを見て驚いたのがきっかけ(上掲写真)。南港に客船が停泊しているではないか。
が、その状況は今日から変わり、貨物船を除いてフィンランドへの入港はすべて禁止されることになった。出国はOK。すなわち、前回記載したようにタ リンクシリヤはヘルシンキからタリンへの運航を継続しているし、ストックホルムに渡ることも可能。ただし、いつ戻れるかは分からない。
例によって予約サイトをのぞいてみると、5月16日以降なら往復予約ができる(Viking Line)。しかしあくまでも予約が可能なだけで、実際に運航されることはなかろう。
23日時点でスウェーデンでの感染者総数は1万6004人、うち1937人が死亡している。週刊プレイボーイの5月4日号だったか、記憶はあいまいだが、とにかく週刊誌でスウェーデンの内情がレポートされていた。
意外と知られていないことだが、スウェーデンというのは貧富の格差が大きい。同レポートはその点を指摘し、コロナは貧困層を直撃したとまとめている。主な被害者は移民である。アメリカでも大量に死亡したのは黒人貧困層である、とその共通点を挙げている。
こ の辺はフィンランドとは状況が大きく異なる。フィンランドにもアフリカ、アラブ、東南アジア、旧東欧からの移民は多いが、彼らが特段の貧困層を形成してい るとは思えない。すなわち、外人・移民の罹患、その挙句の死亡率とフィンランド人のそれとの有意差はないだろう。今のところは。
フィンランドでのコロナ感染者数は3月上旬から増加の一方。一時期は日に200人を超す新規感染者を記録した。が、外出自粛が功をなし たのか、4月上旬のピーク以降、波はあるものの減少傾向に転じた。もちろんこれは新規感染者数が減りつつあるだけで、総数は増えているのだから安心には程遠い。むしろ逆かもしれない。
23日の総感染者数4129人。死者149人。3日前までの死者が94人だったことを考えると、威力は増しているといえるのではないか。
なぜフィンランドではコロナ感染者が少ないのか?
2020.4.26
初めにことわっておくが、今回のタイトルは世のブログの大勢に倣い、羊頭狗肉なものにした。本文を読み進めれば、その意図がわかるはずである。
圧倒的な人口差を考慮しない比較に意味があるのか
さて、WHOのデータによると4月26日時点でフィンランドで確認された感染者は4475人、死亡186人。一方、日本ではそれぞれ1万3371 人、366人である。こうしたことから「フィンランドでは感染者が少ない」といった報道がなされてきたわけだが(「現代ビジネス・講談社」など)、本当だろうか。
そもそも、感染者数の多寡を比べることにどれほどの意味があるのか。感染者に数えられるのは受診者だけだから、実態を表していないことは誰にも分かりそうなものだが。潜在的な感染者を含めれば、公表値を上回っていることはまちがいない。そんなあいまいな数値をもとにして客観的な分析ができるのだろうか。
いっぽう、死亡者数は絶対値だから各国の状況を比較する根拠になりうる。情報隠蔽を疑うとキリがないのだが、統計を信じてフィンランドと日本での死 亡者数を比べてみよう。そうすると日本の総数はフィンランドの倍であることがわかる。これに基づき、「なぜフィンランドでは感染者(実際には死亡者)が少ないのか」と問うのなら、答えは簡単だ。人口が少ないからに他ならない。
現在の日本の人口は約1億2600万人。かたやフィンランドは550万人。およそ23:1である。つまり、フィンランドでの186人の死者は、日本なら4000人以上に相当するわけだ。これでも「フィンランドでは感染者が少ない」と言い張るつもりか。
フィンランドでのコロナ対策が巷に浸透していることは確かだろう。うがい、手洗いの励行、他人との距離を保つ、外出自粛、店舗・娯楽施設等の大幅な営業 制限・・・・。こうした努力がウィルスの広がりを抑え、新規感染者数は減少傾向にある。国民が足並みをそろえて取り組んでいる事実は評価すべきである。
いっぽう、日本の対策はフィンランドに比べると非常に緩く感じる。人口の多さや、テレワークへの移行が難しい等の事情があるのでやむを得ないにしても、いまだに歓楽街や娯楽施設に足を伸ばす人々が絶えないではないか。が、それにも関わらず、フィンランドに比較すれば日本の感染者は圧倒的に少ない。「なぜ日本では感染者が少ないのか?」を、本当にそうなのかどうかも含めて考察してほしいものである。
「教育水準世界一」、「幸福度ナンバー1」などといったキャッチフレーズと同様、「感染者が少ない」という報道も、とにかくフィンラン ドを持ち上げるのが第一目的としか思えない。フィンランドは(日本人が)批判してはいけない国なのである。そんな深層心理で創作したヨイショ記事に有意義 な内容があるわけがない。
なお、人口1000万人のスウェーデンでの死者は2000人を超えた。相対数、絶対数ともにとんでもない数値だ。これもまた「独自路線」として評価する声が強い。
マスクが欲しい
2020.4.28
中国がマスク外交を展開し始めたのはいつだったか。フィンランドもいち早く呼応し、4月8日、第一弾として200万枚のマスクがヘルシンキに到着し た。が、すべて衛生基準を満たしておらず、政府は遺憾の意を表明。それらがどうなったかは不明。14日に到着した第二便も使い物にならず、市中に出回ることはなかった。これらのマスクが送り返されたのか、破棄されたのか。報道されないのでその行方は分からない。「有効利用する」とのコメントがあったが、ど うなったのか。いろいろ胡散臭い話もあるが、それはとりあえず置いておこう。
フィンランドでマスクは異様な光景
現在の日本でマスクをせずに外出すると非難の目を向けられるだろうが、二月ほど前までのフィンランド(およびほとんどの欧米諸国)ではその逆で、マ スクをしている人は排除される傾向にあった。「重病人が出歩くんじゃないよ」という認識である。日本でいえば、点滴スタンドを引きづって街中を歩くような もんだろう。一般のフィンランド人がマスクを着用することは皆無だったといってよい。私事になるが、フィンランドに移住した初めての冬。散歩時に防寒対策としてマスクを着けようとしたら、「それだけはやめてくれ」と奥さんに言われた。極めて異様に見えるらしい。
コロナが猛威を振るい始めた3月も半ばになると、マスクをつける人を見かけるようになるが、着用者はアラブ系、アジア系の外人のみ。中にはフィンラ ンド人もいたかもしれないが、まさに数えるほどだったろう。スカーフで口元を覆う人はいた。その効果の有無は別として、フィンランド人のマスクへの嫌悪感を改めて感じたものだ。
さらに一月がすぎた4月中旬になると、マスクをしたフィンランド人を目にするようになった。とはいえ着用率は100人に一人にも及ぶまい。そんなわけで、私もまだマスクは使っていない。医療機関 でもマスクが不足している現状、市中で購入することはできないし。通販(ドイツ等から取り寄せ)で買えないこともないが、現物を確認したうえでないと・・・ と、二の足を踏んでいる。マスクをしている人がほとんどいない、という状況も購入の動機を下げている。濃厚接触は完璧に防いでいるし。