少しの希望があれば人は生き続けることができる
監督 Aki Kaurismäki
製作 1990年 75分 K-12
出演
Jean-Pierre Léaud … Henri Boulanger
Margi Clarke … Margaret
Kenneth Colley … The Killer
T.R. Bowen … Department Head
Imogen Claire … Secretary
Cyril Epstein … Cab Driver
Joe Strummer … Singer
本作公開の90年以降、カウリスマキの評価は国際的に高まっていくが、それを象徴するような作品。全ロンドンロケ、主人公を演じるのはフランス人、その他主要登場人物はイギリス人。全編英語。海外市場をメインターゲットにしたのか、フィンランド語のタイトルはない。
しかしオープニングからカウリスマキ独自の映像美にあふれ、登場人物を含め、あたかも60年代のヘルシンキを見ているような気にさせる。
冒頭に流れるテームズ川の映像は、1971年公開の「小さな恋のメロディ」のそれよりもはるかに古く見える。続いて主人公勤めるオフィス、街並み、室内に至るまで、90年のロンドンとは思えない。カウリスマキ本人が認める「過去を見つめる男」の本領発揮である。役者陣もカウリスマキ一食。無口かつ無表情な主人公。主人公が恋に落ちる相手は不美人。誰もがやたらとタバコを吸い、酒をあおる。食事は一貫してまずそう。こうした設定に長年のファンは落ち着きを見出す。
本作のストーリーは以下のとおり。会社をクビになった主人公アンリは自殺を試みるがことごとく失敗。殺し屋をと接触して、自分の殺害を依頼。しかしパブで出会った花売り娘に恋をして生きることを決意。殺人契約をキャンセルしようと殺し屋のたまり場を再訪するが、焼失していた。殺し屋の追跡は続く・・・。
自殺の失敗がいかにも情けなく、殺し屋が簡単に見つかることが馬鹿らしく、ジョー・ストラマー(The Clash)の独演も空回りして、とこれといった見どころはない。しかしそれでいて全体としては哀愁に満ちたユーモアを届けてくれる。もちろん、最後にはほのかな灯りを感じさせながら。
画面が暗転してシーンを切り替える場面が何か所かアリ。これ、やりたかったんだろうなあ。
また、サングラスの売り子としてカウリスマキも登場。数秒のことだが、これもまた情けなさが魅力。