フィンランド式残酷ショッピングツアー:Shopping tour

ホラーでもコメディでもなく、退屈極まる70分

監督 Mikhail Brashinsky
製作 2012年  70分
出演
Tatyana Kolganova 母
Timofey Yeletsky 息子
Tatyana Ryabokon
Alexander Lutov
Satu Paavola

ロシア映画なので原題は”шопинг-тур”。英訳すればShoping-tour。そして邦題が「フィンランド式残酷ショッピングツアー」。ホラーコメディとして紹介されているが、怖くもおかしくもない。完全にタイトル負け。というかタイトルの勝ちというか。

夏至の日にフィンランドへの買い物ツアーに参加したロシア人旅行者が次々に食い殺されていく、という話だが、全編を通じて盛り上がりがない。70分の短編なのに退屈きわまる。

冒頭からしばらくの間は特に散漫。親子の言い争いが延々と続き、他のツアー客もどうでもいい会話を繰り返す。25分を過ぎてようやく物語に展開が見られそうな気配を感じるが、そこから食人鬼登場までさらに5分。ここから一挙に盛り上がるかあ、という期待は満たされることなく、中途半端な挿話がだらだらと散りばめられるだけで、エンディングへ。
携帯電話で撮影したモキュメント、という設定なのでしょうがないのだが、必要以上にぶれまくる画面に眩暈を覚える。ストーリー展開でクラクラさせてくださいよ。

大型家電店で、店員に襲われるロシアのツアー客

ロシアでは2000館以上で公開され、100万人以上の観衆を集めた(2013.11)という。鬼畜食人集団にされたフィンランド人たちは怒って当然、という反応が日本のブログなどに出ているが、的外れだろう。それにこんなもので怒っていたら、「ホステル1・2」などはどうなってしまうのか。同映画ではスロバキアに殺人クラブがあるという設定だが、シリアスなホラー映画なので「ひょっとすると地下にはあるのかも」と思えてくる。デッドレーン(Shuttle)では若い女性が中国に密輸される(こりゃありそうだ)、というストーリーだが、スロバキアも中国も作り物映画に腹を立てたりしないのだ。さらに本作はコメディーをうたっているのだから。フィンランド人は「ロシア人を食い散らす」ことに、むしろ留飲を下げたのでは?

食人鬼となったフィンランド少女もツアー客を襲う

そんなわけだから本作に対する当地の反応は冷めたもの。フィンランド人の運営するブログには「オスカー間違いなし!」という書き込み(当然皮肉)があったり、「アイデアは面白いが映画としては・・」など、まともに相手にするのもバカらしいといった感じだ。

なかにはマジメな人もいて、「人食い=残酷行為はロシア(プーチン)の十八番だろう」といった書き込みもあるが、映画のエンディングで納得。ロシア人のほうがよっぽど怖いぜ、というショットがある。本作の商業的成功に気をよくしたミカエル監督はフィンランド人がロシアに旅行するという続編を構想中ということだが、まさかフィンランド人が本作のエンディングのような行為に出るような終わり方にはしないだろう。

結局なんだったんだ、という内容を象徴

なお、ロシアからフィンランドへの買い物ツアーは普通にあります。

  • このエントリーをはてなブックマークに追加