予想を超える展開はない
監督 Klaus Härö
製作 2009年 75分
出演
Kaarina Hazard… Leila 主人公
Heikki Nousiainen … ヤーコブ神父 JacobJukka Keinonen … 郵便配達員
Esko Roine … 刑務所長
フィンランドオスカー候補、心の琴線に触れる名作、と国内外の世評は高いが、予想通りの期待外れ。映像が美しいとも賞賛されるが、あの場所を知ってる人なら、もっと綺麗に撮れたんじゃないかと思うのではないか。Näkymätön ElinaやÄideistä parhainで見せてくれたほどのものではない。ストーリーも単純。10分見ればその後の30分がわかり、30分後には結末も推測でき、そのとおりに展開した。
女主人公のLeilaは終身刑で服役していたが、どういうわけか12年で恩赦を受けて釈放。とある老神父の手助けをほぼ強制される。渋々その任に就くが、やがて二人の心が通じ合い・・・と、もうこれだけですべて分かっちゃうからこれ以上は書かない。
それよりもおかしな設定が多すぎて興ざめする。盲目の老神父はどうやって日常生活を維持していたのか。終身刑の囚人を12年の服役で釈放させるほどの力がなぜ彼にあったのか。そもそも単純殺人で終身刑になるだろうか、フィンランドなんだぞ。Leilaと郵便配達人の深夜の格闘に気づかぬはずはなかろうに。その後、郵便物が全く来なくなるのは不自然すぎるだろう。遠く離れた教会から、盲目の神父がどうやって一人で戻ってきたのか。特定の手紙の束を山積みの中からなんなく探し出せたのはなぜか。ストーリーにのめりこむほどの魅力がないので、どうでもいいことが気になってしまう。
映画の流れとは全く関係ないが、個人的に驚いた点がある。この教会(Tyrvään Pyhän Olavin kirkko)、行ったことがあるんですよ、たまたま。その近所に友人が住んでいて、ある年のクリスマスミサに参列したことがある。そしてもう一つ。レイラの姉から届いた手紙の住所を何気なく調べてみたら、その近所にも何拍かしたことがあるのに気づいた。ヘルシンキの東外れで、そこにも友達が住んでいたのだ。なんたる偶然。それこそ神の導きのような出会いを感じたが、他の人には全く意味のないことですね。
登場人物は8人。うち3人は遠景に映るエキストラレベル。タクシー運転手のセリフは一言。冒頭に出てくる刑務所長は2分ほど喋るが、実質的にはレイラ、神父、郵便配達員の3人だけで進行する。これは面白いアプローチだと思う。
なお、このオラヴィ教会(Tyrvään Pyhän Olavin kirkko)は1997年に放火された。映画に映る教会内部が殺風景なのはそのせいかと思ったが、2003年には再建され、撮影時には座席も整備されていたと思うのだが・・。
ハロ監督のその他の作品
Näkymätön Elina 2003年 今は亡き父の思い出を噛みしめる孤独な小学生
Äideistä parhain 2005年 第二次世界大戦中の疎開児童を描く