モイ!はこんにちは。モイモイ!もこんにちは。

フィンランド人すべてが正しいフィンランド語を話しているわけではない

フィンランド関連のブログ、HPで書きまくられてるから、モイ(Moi)がカジュアルな「こんにちは(やあ、Hi,Hello!)」を意味することを知っている人は多いはずだ。で、そのブログ等では「モイモイ(Moi moi)」は「バイバイ、Bye」なので混同してはならない、と”解説”が続く。フィンランド人が書いたブログでもそのように記している。「私(フィンランド人)がMoi! と言ったら相手(日本人)がmoi moiといったので、じゃ、さよなら、と言いました」とか。冗談なのはわかるが、あんた、フィンランド語分かってんのか、と即座に思った。

moiがこんにちは、moi moiがバイバイ、というのはおおむね間違いではないが、100%正しいわけではない。出会いがしらに「モイモイ」というフィンランド人も決して少なくない。
スーパーで買い物でもしてみればいい。キャッシャーの店員がmoi moiということがあるだろう。そんなとき、「じゃあ、さよなら」と言って買い物をやめる人は皆無である。この場合、moi moiは「こんにちは」なのである。「ようこそいらっしゃいました」とは程遠いけどね。

同様のあいさつに「ヘイ(Hei=こんにちは)」という言い方がある。モイよりはやや丁寧なニュアンス。これも二度繰り返して「ヘイヘイ」と言ったりする。こちらのほうは私自身「ヘイはこんにちは、ヘイヘイはバイバイの意味でしか使わない」と思い込んでいたが、そうでもないことに気づいた。やはりヘイヘイを「こんにちは」の意味で使う人もいるのだ。もちろん話者はフィンランド人である。

モイとモイモイ、ヘイとヘイヘイ。いくら似ているからと言って「やあ」と「バイバイ」を言い間違えることは考えられない。出会い頭に「モイモイ」と言われた場合、それは「こんにちは」の意味なのだ。とはいえ、「こんにちは」がふさわしいケースで「モイモイ」というフィンランド人は全体の5%くらいではないだろうか。「ヘイヘイ」はさらに少ない。そんな統計があるわけではないので単なる印象に過ぎないが、出会い頭にモイモイという人は少ないことは事実。したがって「モイはこんにちは・・・」という説明もあながち間違いではない。モイとモイモイの違いをフィンランド人に聞けば、前者はこんにちは、後者はバイバイと答える人が多数派だろう。

モイは「こんにちは」と覚えたほうが無難ではある

では「モイモイ」を「こんにちは」の意味で使うのはどういう人なのか。地域によるのか。学歴によるのか。若者ことばなのか。誤用が黙認されているのか。はっきりとしたところは分からない。老若男女を問わずに使用されているからだ。日本語の「すべからく」が広く誤用されているのとは異なる。あ、「すべからく」については呉智英さんの著作を参照してください。

そうはいっても、我々ガイジンはモイは「こんにちは」、モイモイは「バイバイ」に限定して使ったほうが無難だ。というのは、ネイティブスピーカーはガイジンの誤用には非常に敏感だから。日本語の場合で考えてみればいい。かなり流ちょうに日本語を話すガイジンがちょっとした誤用をしたときに一種の不協和音を感じたことはないだろうか。あるいは発音、イントネーションの違和感。とはいえあきらかな間違いではなく、会話が途絶えることもないのだが、耳に残る。

あるフィンランド語教師が同様の感想を述べていた。「フィンランド人が変な発音をしても気にならないが、どんなにうまいフィンランド語を話しても、相手が外国人がだと即座にひっかかる」と。

フィンランド人が「モイモイはさよなら」と主張するのはそのせいかもしれない。つまり、フィンランド人の「誤用」は気にならないが、ガイジンが発すると非常に気になる、というわけだ。したがって我々学習者は定石を踏んだほうがよいだろう。こんにちは、はモイ。バイバイはモイモイ。しかし「モイモイ」が「こんにちは」の意味で使われることもあることは知っておいてよい。また、わかれぎわに「モイ」だけで済ませる人もいる。え~バイバイなのにこんにちはかよ、って。

モイ。単純な言葉ではあるが、これだけでも言語の広がりを実感できる。また、すべてのフィンランド人がフィンランド語に精通しているわけではないという当然すぎることもわかるはずだ。

なお、ここまでmoi moiをバイバイと訳してきたのには理由がある。意味合いとしては「さよなら」なんだけど、日本語のそれをフィンランド語訳するとさらなる問題が生じるからである。この件についてはまた項を改めることにする。Näkemiin!

モイモイ同様、この写真だってハローかバイバイかわからない。

ああ、そういえば「Mo!(モッ)」なんて言い方もあるな。日本語だと「ヨッ!」みたいなニュアンス。子供~若者の一部が仲間内で使う。なんか微笑ましい表現。